2013年10月19日

大阪市営地下鉄の値下げは、民営化した方が困難と思う理由

 橋下市長が、地下鉄初乗り運賃の値下げを打ち出しました。
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大阪市営地下鉄:初乗り値下げ、4月先行の意向 橋下市長
毎日新聞 2013年10月17日 22時39分
http://kiziosaka.seesaa.net/article/377824101.html

 大阪市の橋下徹市長は17日の定例会見で、市営地下鉄の初乗り運賃(200円)の20円値下げについて、市議会が地下鉄の民営化を認めるかどうかに関係なく、来年4月に実施する意向を示した。来週にも最終決定する。一方で、来年10月までに議会が民営化条例案を可決しない場合、値下げした運賃を元に戻すなど、値上げを検討すると強調した。

 当初、民営化条例案への賛成を条件に、値下げに踏み切る考えを市議会各会派に伝えていたが、値下げの先行実施により、民営化に慎重な議会側をけん制する狙いとみられる。

 橋下市長は会見で「地下鉄民営化を公約に市長に当選した」と述べ、民営化論議の行方に関わらず、まず値下げに踏み切る考えを表明した。初乗り運賃以外にも、「2区」(乗車距離3〜7キロ)の一部について20円値下げする可能性も示した。

 その上で、「公営のままだと料金を下げることはできない」と指摘、来年10月までに議会側が民営化に賛同しない場合の値上げに言及した。議会側には「民営化が駄目な理由を示してほしい。納得すれば民営化はやめる」と求めた。

 橋下市長の発言について、公明市議は「先行値下げは、民営化に賛成を迫る荒っぽいやり方だ」。自民市議も「値下げの根拠を示すべきだ。震災対策や安全対策の財源が確保できるか疑問だ」と批判した。
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 地下鉄事業民営化方針(2013年2月)(元データ)の中では、消費税引き上げタイミングと合わせて、次のような料金値下げを打ち出しているので、来年4月の初乗りのみ190円への値下げを、180円にということのようです。
料金値下げの内容2段階.jpg

 わたしが疑問に思うのは、「公営のままだと料金を下げることはできない」、(他の記事からですが)「値下げは民営化による経費削減が前提」と主張している部分。
 地下鉄事業民営化方針(2013年2月)やその検討の元となった大阪府市統合本部会議で検討の「地下鉄民営化・成長戦略PTの最終報告」(2012年6月)の内容を見る限り、公営のままより民営化(正しくは、外郭団体化)した方が財務状況は悪化するので、「公営のままだと料金値下げをできるが、民営化するとできない」なら分かるのですが、逆の主張は理解できないのです。

 「公営のままより民営化した方が、財務状況は悪化する」について見てみましょう。

 大阪都構想パッケージ案で物議を醸した「地下鉄の民営化効果275億円」ですが、この数字の元になった地下鉄事業民営化方針では、次のようにされています。(元データ 民営化方針P10)
○補助金削減 年間200億円
○固定資産税など市税納付 年間50億円
○配当 年間25億円

 このうち補助金削減は計算方法がおかしいと指摘され、×年間200億円→○106億円に修正され、地下鉄民営化効果は全体で181億円に修正されています。(元記事

 普通「地下鉄の民営化効果」というと、民営化でコストカットなどが行われ、地下鉄事業の中でお金が生み出されることと思いがちですが、補助金削減や市税納付などの内訳を見ると違うことが分かります。
 この地下鉄民営化効果とは、地下鉄の民営化によって、地下鉄から市税納付などを受けて、大阪市役所の一般会計予算がどれだけ潤うか、ということです。

 地下鉄の側から見れば、この地下鉄民営化効果181億円とは、民営化(=外郭団体化)によって、地下鉄の会計から、大阪市役所の一般会計予算に対して、市税納付などで、資金流出してしまう金額(コストアップ額)なのです。

 あと、税金の支払いはこれだけでは済みません。
 PT最終報告によると「固定資産税、都市計画税、事業所税、事業税」は年間64億円(元データ P20)で、民営化基本方針の収支見通しによると民営化1年目の法人税等(税引前損益−税引後損益)は44億円(元データ P37)。租税合計は108億円になります。
 市税納付額が50億円とされていますから、58億円は国税・府税としての納付額と考えられます。
 つまり、民営化に伴う地下鉄会計からの資金流出額は、地下鉄民営化効果181億円+国税・府税58億円の合計239億円にも上ります。

 では、民営化によるコストカットなど、地下鉄の会計が潤う効果額は、どのくらい見込まれているのでしょう?

 PT最終報告によると次の通りです。(元データ P20)
民営化による業務改善額86億円(うち人件費削減額19億円)
民営化以外の業務改善額42億円(うち人件費削減額39億円)
合計 128億円です。
 ただし、業務改善額には、実現性に疑問符が付くものや、駅での福祉的対応を区役所に押し付けて駅無人化の人件費削減を計上してるもの(元データ P26)などがあります。

 この結果、現状に対する民営化(=外郭団体化)後の地下鉄会計は、
業務改善額128億円−資金流出額239億円=▲111億円
です。

 また、民営化以外の業務改善額42億円は公営のままでも行うと考えると、
(42億円改善後の)公営に対する民営化(=外郭団体化)後の地下鉄会計は、 
業務改善額86億円−資金流出額239億円=▲153億円
です。

 この民営化による100億円以上の資金流出が、どの程度の規模か見てみましょう。
 橋下市長が市長就任直後に交通局が示した全区間20円値下げ案での想定減収が130億円(元記事)だそうです。
 また、市バスの維持を考えても、経常赤字24億円と地下鉄事業からの繰入金30億円(2010年度 バスPT最終報告1-P7)とのことなので、十分に賄うことができます。
 民営化による111億円とか153億円とかの資金流出を値下げ原資にすると、かなりの料金値下げなどが可能な金額であることが分かります。

 地下鉄民営化(=外郭団体化)を行うと、民営化による業務改善額を計画通り実現できても、税金の納付などで多額の資金流出が発生し、財務状況は100億円以上悪化します。

 そのため、橋下市長が「公営のままだと料金を下げることはできない」、「値下げは民営化による経費削減が前提」というのは、地下鉄民営化案の内容とは、真逆の説明をしているように思われます。
posted by 結 at 05:14| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする